日進月歩を遂げるデジタル領域。
ネットもスマホもドローンも、テスラを代表する自動運転カーも驚異的なスピードで進化を遂げているのはみなさんご存じの通り。でも、実はあまり目立たないですが、繊維業界ここ最近は特に素晴らしい進化を見せているようです。
今回はそんな繊維界の新素材の紹介と、釣り用にも使えるのかなどについて考えてみたいと思います。
人口クモ糸「QMONOS」
「QMONOS」。
クモノス。こんな繊維があるのをみなさんご存知でしょうか?
山形県に本社を持つSpiber株式会社が、人工的に作り出したクモの糸繊維です。アパレル業界はもちろん、工業分野や宇宙事業などでも活用が期待されている、いま世界が注目する日本の技術です。
クモの糸が非常に細い上に非常に丈夫、それでいてしなやかであることは有名でしょう。映画スパイダーマンなんかでも、それっぽい説明が出てきますしね。
クモの糸の主成分であるタンパク質を微生物に作らせ、化学繊維のように紡糸・加工したものがこの新素材クモノス。その強度は、鋼鉄を上回るとのこと。
鋼鉄以上の強さとは、同じ太さだった場合にクモノスの方が強い。ということを意味します。
とにかく極細ながらも、圧倒的に強いのが特徴です。
ノースフェイスと共同開発スタート
そんな世界中が注目する新素材クモノスですが、これまで開発コスト高く、量産するのは難しいという課題を抱えていました。
しかしながら、つい昨年になって一般商品化に向けて大きく動き出していました。釣り人のみなさんにとってもお馴染み(ジャケット着てる方も多いのではないでしょうか?)、ノースフェイスと共同で商品開発を進めています。
「MOON PARKA」という名のアウタージャケットが、今年度中に一般リリースされる予定です。居地の激しい雨嵐などに耐える一方、これまでにない軽さを目指しているようです。
イメージ動画もあります。”ものづくりだけでなく、社会全体を変えようとしている”。
釣り用ラインとしての実用化に期待
そんな商品化が始まりつつあるクモノスですが、釣り用ラインとしての実用化にも期待が高まります。
ご存じの通り、釣り用ラインとしては現在の主流はナイロン、フロロカーボン、PE(ポリエチレン)の3つ。これらに加え、第4のラインとして新素材クモノスを使った新商品が開発される可能性もあるでしょう。
今回のノースフェイスのように株式会社Spiberの単独ではなく、東レやクレハなど日本を代表する化学メーカーとの共同開発という形で。
現在のところ、強度面で言えばPEがもっとも優れていることになります。しかしながら、伸縮性が全くない、横からのダメージには弱い(根ズレなど)という欠点も。それを補う為に、素材の異なるフロロカーボンなどでリーダーを結ぶわけです。
ところが、このクモノスは伸縮性を出すことも可能です。今回ノースフェイスのジャケット素材に採用されることになったのも、この伸縮性があったからだとか。
つまり、PEのような(鋼鉄並みということなのでそれ以上)圧倒的な強度があり、かつナイロンのような伸縮性もある。それでいて圧倒的に細い。
さらに言うと(これは僕の勝手な推測ですが)、もしかしたら比重もコントロールできるかもしれません。つまり浮くクモノスラインと、沈むクモノスライン。
フロロは沈んだり、PEは浮いたりと素材によって浮き沈みがありますが、そんなことまで製造段階で微調整できるかも!?しれません。
そんな夢のようなラインが登場するのも、そう遠くはない未来でしょう。
まだまだアパレル第一弾の発売がこれからの段階ですが、もっともっとアウトドアや釣りなどでも実用化されることを期待したいものです。
via:Spiber